『人間の土地』サン・テグジュペリ

星が一つ、早くも瞬きはじめていた。僕はそれに眺め入った。僕は思った、この純白の地表は、ただ星々の前にだけ、幾千万年以来捧げられていた、澄んだ空の下に広げられた汚点(しみ)一つない卓布(テーブルクロス)。そのとき、ぼくはこの卓布の上、自分の足元から二十メートルほどの所に、黒い一つの石を見いだして、何かある大発見でもしたときのように、心臓に衝撃を感じた。
 ぼくは三百メートルの高さに積み重なった貝殻の厚さの上に立っていた。このおびただしい累積全体が、断乎とした証拠となって、こんな所に石が存在するはずないと否定しているように思われた。珪石が、あるいはここにも、地下深い所になら、地球の緩慢な消化作用の結果として存在するかもしれないが、それにしても、このあまりに新しい表面へまでどんな奇蹟がそれを持ち上げたのだろうか?むねをどきつかせながら、ぼくはその自分の発見物を拾い上げた。見るとそれは涙の形をした、金属のように重い、拳大の黒い一個の石だった。

2005年07月23日 achieve notes トラックバック:0 コメント:0